麻の葉文様とは?

正六角形を基本とした幾何学文様。麻の葉に似ていることからその名がつけられた。邪気を祓う力があるとされ、魔除けの文様ともいわれる。
麻は丈夫でまっすぐに伸びることから、子供の健やかな成長への願いが込められている。この文様を子供の産着に用いる風習もある。

着物や工芸品、建具などでよく見かける麻の葉文様。

意外と知られていませんが、この「麻の葉」というのは、実は「大麻(おおあさ)」のことなんです。

大麻と書くと麻薬が連想されてしまいますが、その怖いモノのお話ではありません。今回は大麻と日本人の深い歴史のお話です。

麻と日本人の関係は縄文時代から

麻との歴史は古く、なんと縄文時代の遺跡から麻の繊維の縄や編み生地の出土が確認されています。そのことからわかるように古くから生活に欠かせない素材だったのです。

時代が進んでも変わらず「麻」は日本人にとって欠かせない素材のひとつであり、お米と同じように大切に栽培されました。成長が早く栽培しやすいことから、木綿が普及するまでの江戸時代以前はどうやら麻が繊維素材の主流だったようです。

麻は葉や実も食べれますし、実からは油も取れる。そして茎からは繊維が取れます。麻の繊維は木綿や絹よりも通気性に優れているので夏の着物として愛用され、ボロボロになった着物は再加工して和紙に変えたりと、余すことなく使われていたのです。
(ちなみに家康公は麻生地のふんどしがお好きだったとか。)

麻と大麻はどう違う?

麻は日本人と深い関係だったことは前述したとおりですが、

ではその麻と大麻の違いは?

というと実は同じもの、単なる別称でしかありません。
古くは単に「麻」と読んでいたそうですが、伊勢神宮が発行するお札のことを「神宮大麻」と名付けたところから、麻を「大麻」と呼ぶようになりました。要するに麻は大麻(おおあさ)のことだったのです。

大麻は決して危ない存在じゃなかった

え?麻って大麻のことなの?しかも衣類に使われていた…!?とびっくりされるかもしれませんが、そもそも日本では「麻薬」として大麻を利用していた、という文献はほぼ見つかっていません。
生活に必要な資源として利用していただけで、現代で言う怖い・危ないモノではなかったのです。

また、衣料としてだけでなく「聖なる植物」として神道の祭祀に使われたりと、日常生活から神事にいたるまで重要な役割を担ってきたとても大切な存在なのでした。

こんなにも身近で親しまれてきた「大麻(おおあさ)」。現在では昭和23年の「大麻取締法」によって厳しく制限されてしまい、とても残念なことですが、繊維としての大麻はほぼ消滅してしまいました。


camera-icon『松竹梅湯嶋掛額』(八百屋お七) 月岡芳年
文化6年(1809年)、歌舞伎狂言「其往昔恋江戸染(そのむかしこいのえどぞめ)」で八百屋お七役の五代目 岩井半四郎が麻の葉段鹿子の振袖を着たことから麻の葉文様が大流行。若い娘の代表的な着物の柄になった。

遠い昔から私たち日本人にとって大麻(おおあさ)は身近な存在だったこと。

とても大切にしてきた歴史があったこと。

麻の葉文様を見かけた時は、そんなことを思い出して心に留めていただけたら嬉しいです。