平常心、揺れ動くことのない心理状態。

緊張する場面こそ、平常心で対処する。
また、何事もない日常的な時間こそ、
非常の際の覚悟で、物事に集中していく。

宮本武蔵は『五輪書』で、
山本常朝は『葉隠』で、
共に平常心について同じ内容を述べています。

その原文と現代語訳、簡単な解説を見ていきましょう。

宮本武蔵
『五輪書』…水之巻

(原文)
兵法の道において心の持やうは、常の心に替る事なかれ

(現代語訳)
兵法の道において、心の持ち方は、常の心と変ることがあってはならない。

(解説)
心の持ち方は常に平常心である。平常の身体のこなし方を戦いのときの身のこなし方とし、戦いのときの身のこなし方を平常と同じ身のこなし方とすること。
武蔵のいう平常心とは、日常生活の時の心ではなく、まさに「水」のように変化に富み、一定の形をとらずに動き続ける「水」の心である。心を素直にし、楽な方に流れないよう心掛けることが肝要である。

山本常朝
『葉隠』…聞書第二 〇二五〇

(原文)
「その時が只今」武士道は毎朝毎朝死習ひ切れきれて置く事

(現代語訳)
「只今がその時、その時が只今」は武士の心がけである。武士は毎朝、毎朝「死ぬ覚悟」が常に出来ていなくてはならない。

(解説)
何かが起きてから慌てふためいてはならない。平素から、いつも心の準備をしておかなければならない。何事もない日常的な時間にこそ、非常の際の覚悟で物事に集中していくべきである。

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それぞれの書物が著された時代背景もあり、現代人には極論ともとれる箇所もありますが、現代においてもこの精神を意識することはとても大切です。
実際にはこの心構えを「常に保つこと」は非常に難しいはずです。ですが、先達が残してくれた教えを事前に意識しておくことで、いざという時に「冷静になれ」と自分を諌める道標になるのです。

『五輪書』『葉隠』が著された時代
『五輪書』…寛永20年(1643年)から死の直前の正保2年(1645年)にかけて、剣豪・宮本武蔵によって執筆されたとされる兵法書。
『葉隠』…江戸時代中期(1716年頃)に出された、肥前国佐賀鍋島藩藩士・山本常朝の武士としての心得についての見解を田代陣基が筆録した書物。