泥棒を図案化せよ。

と言われたら、日本人は「唐草模様の風呂敷を担いで逃走する人」が頭に浮かぶ人が多いかと思います。

しかし唐草文様は、
ツル性の植物が伸びたり絡んだりした形を図案化した植物文様であり、ツル性の植物は生命力が強く、茎をどこまでも伸ばしてゆくことから”繁栄・未来永劫”の象徴とされ、日本では神社や寺院でも見かける吉祥紋(縁起の良い図柄)なのです。

ではなぜ、縁起が良い図柄であるはずの唐草模様が「=泥棒」というイメージとして定着しているのでしょうか。

今回はこのことについての考察です。

このイメージの出始めと思われる頃の泥棒は、

  1. まずは手ぶらで家に潜入
  2. これから盗む品物を運ぶ為の「大風呂敷」を探す
  3. 見つけておいた大風呂敷で物色した盗品を包み、背負って逃走

という流れで盗みを働いたと考えられます。

ようするに、大風呂敷であれば無地でも「なんでもいい」のです。むしろ盗品を手早く持ち去る手段があれば、必ずしも風呂敷を使わなくてもなんら問題なかったはずです。

ではなぜ唐草模様の風呂敷なのか

日本では古来より、風呂敷を結婚の引き出物などを包む袋としても使っていました。そして唐草模様の風呂敷は、明治から昭和にかけて大量に生産されて風呂敷の定番柄となり、比較的多くの家にありました。このことから、手ぶらで潜入した泥棒が潜入先で「唐草模様の風呂敷」を入手しやすかったと考えられます。

つまり、

唐草模様の風呂敷それ自体が「物色に入った家からの盗品」として表現され、様々なメディアによって拡散されていくうちに「泥棒=唐草」という単純化したイメージが定着したのです。

「他人の家の唐草の風呂敷(=縁起の良い物)を、泥棒が背負って逃げる」という図案だと解釈すれば、唐草模様の本来の意味も損なわれてはいませんが、「表現する側」も吉祥紋である唐草文様の持つ本来の意味を知っておけば幸せになれる、かもしれません。

「唐草=泥棒」というイメージの出始め…
泥棒という言葉自体は近世後期から使われているとされるが、浮世絵には「唐草模様の風呂敷を背負った泥棒」は見られない。このことから、唐草模様の風呂敷を背負った泥棒のイメージは、明治以降に漫画やTVCMなどで広まったイメージであると推測されている。